委託先団体:一般社団法人ソフトウェア協会
1.事業概要
現在約60万人(平成30年度内閣府調査)と推計されている引きこもり人口を対象に、メタバースや、AI等のICT技術を活用し、就業・社会参加できるように支援するクラウドシステムの要件を明確化します。
具体的には、メタバースを活用した就業・社会参加支援プラットフォームにより、引きこもりユーザやシステムを利用する関係者双方にどのような効果があるか、また、当該システムの運用において、セキュリティ、個人情報保護など、どのような課題があるのかを検討します。
また、クラウドERPとの連携や、農業・水産・ヘルスケア等の体験についても視野に入れます。事業終了後は、結果を踏まえたシステム開発、実証実験、運用に向けて取り組んでいきます。
2.事業の目的
背景・必要性
少子高齢化による労働人口不足の背景から、貴重な人材である引きこもり人口の就業や社会参加は重要な課題です。
仮想空間でのアバターにより、就労支援施設までの交通費捻出が難しい方にも参加できるようなメタバースを構築し、参加者の属性を考慮して受発注者間の円滑なコミュニケーションを支援する発言のリアルタイムAI自動変換等のICT技術を活用し、就業・社会参加を促す革新的なクラウドプラットフォームの構築が、問題解決の一助となると考えられます。
対象領域
本事業は、何らかの業務を受注して実施する「氷河期世代」の引きこもりユーザと、業務を発注する企業・個人をターゲットとしていますが、インフラそのものとしては、「氷河期世代」のユーザに限らず、若年層の引きこもりユーザにも拡張可能です。
3.事業の内容(技術的、機械システム構成上の課題と実施事項)
技術的な課題、機械システム構成・開発上の課題
(1)関係者(引きこもりユーザ・専門家、受入先企業、関連プログラム提供団体等)からの見え方の整理
メタバース・AI等のICT技術を連携した就業・社会参加支援プラットフォームという仕組み自体が、関係者それぞれにおいて、どのような見え方(印象)であるかを整理します。
(2)引きこもりユーザから喜んで受け入れられるUIと仕組みであることを確認
システムの画面デザイン、システムのシナリオベースの基本的な動作が、引きこもりユーザから喜んで受け入れられ、利用が進むようにします。
(3)セキュリティ面での配慮事項の整理
システム運用時のセキュリティ面について、外部からの侵入、情報漏洩の可能性を最小限に抑えるよう、サーバ・ネットワーク・システム環境について、現状のセキュリティ技術動向も踏まえた配慮事項の整理を行います。
(4)コミュニケーションの最適化
コミュニケーションが苦手な引きこもりユーザを想定し、ユーザは自身に代わるアバターを自由に設定して、メタバースの中で自分の好きな存在に変身し気軽に相手とのコミュニケーションがとれるようにします。
課題への対応(実施事項と課題解決のアプローチ)
(1)関係者からの見え方の整理に向けた対応
関係者におけるヒアリングを実施し、ネガティブな面を最小限とできるように途中段階のテストシステムにその結果を反映させます。
また、戦略策定委員会を組織してプロジェクトを推進します。委員会では、引きこもり問題の掘り下げ、ヒアリング計画案レビュー、サービス仕様案・技術仕様案レビュー、テストシステムレビューを予定しており、これらを通して関係者からの意見の整理を行います。
さらに、メタバースによる就労支援を公表している自治体(福井県越前市、福岡県、神戸市、埼玉県戸田市)の関係部署や社会参加支援機関との連携、協力依頼を検討します。
(2)引きこもりユーザから喜んで受け入れられるUIと仕組みとするための対応
基本的な操作が行えるテストシステムを構築し、事業期間中にテストシステムを用いた現場の意見のヒアリングを実施します。ヒアリング結果により、期待や懸念点、操作性などについて、ネガティブな面を最小限とできるように途中段階のテストシステムにその結果を反映します。
(3) セキュリティ面での配慮事項整理への対応
技術仕様案に基づき、専門家へのヒアリングも含めてセキュリティ課題について整理します。整理した事項については、戦略策定への反映を行います。また、事業期間内に専門家との打合せについても実施し、その意見も取り入れて、対応可能なセキュリティ面での配慮事項を整理します。
(4)コミュニケーション最適化への対応
AIによる自動変換技術を活用し、コミュニケーションが苦手な引きこもりユーザが円滑に他人と意思疎通が行えるようなシステムの適用可能性を確認します。
ユーザが自身に代わるアバターを自由に設定して、メタバースの中で自分の好きな存在に変身し気軽に相手とのコミュニケーションがとれるようにするため、メタバース参加者の属性を考慮した発言のリアルタイムAI自動変換でコミュニケーションの円滑化を検討します。
4.社会導入、事業化の戦略検討
社会導入、事業化に向けた課題
(1)費用面、運用面における課題
サービス仕様案・技術仕様案に基づき、システム構築における資金調達、実際の運用面についても事前に検討を行っておく必要があります。公的資金による研究開発プロジェクトへの提案を視野に入れます。また、運用面について、NPO法人や一般社団法人との連携を視野に入れて展開します。
(2)事業スキーム
引きこもり問題に取り組む団体・企業、国内の自治体等への展開のための仕組みづくり、社会導入・普及戦略の検討、メタバースを活用した就業・社会参加支援プラットフォームを運営するコミュニティの構築が必要となります。また、引きこもりから復帰した人材の採用を積極的に検討する企業等の協力が必要となります。
引きこもり問題に対する活動を実施している支援団体・自治体、引きこもり当事者及び本問題に関心のある企業の支援を仰ぎます。コミュニティの形成により、類似の取り組みを進める自治体間の連携体制の仕組みづくり、ひきこもり当事者のみならず、その家族・社会へも貢献できること目指します。
(3)他のユーザ展開ならびに将来的な利活用
本プラットフォームが、広く一般企業においても活用されるような展開が必要となります。ソフトウェア協会の各種委員会や研究会と連携して会員企業の協力も広く仰ぎながら実施していきます。
社会導入、事業化に向けた実施事項
(1)費用面、運用面における課題に向けた実施事項
費用面においては、システムの導入コストの試算をおこないます。運用面については、NPO法人や一般社団法人との連携を通して、導入・普及に向けた推進体制を構築します。
(2)事業スキームに関わる自治体・企業等の確保に向けた実施事項
引きこもり問題に対する活動を実施している国内の自治体・支援団体、引きこもり当事者及び企業をピックアップし、訪問を含めたアプローチと提案を実施します。
(3)他のユーザ展開ならびに将来的な利活用に向けた実施事項
ソフトウェア協会の関連する委員会・研究会のメンバー企業など会員に対して広くアプローチし、本プラットフォームの活用を募ります。
また、可能な範囲で、メタバース空間内での就労に加えて、企業や関連研究会と連携し、引きこもりユーザのリアル社会現場への復帰、業務管理、健康管理について、ERPシステム連携、スマート農業/水産体験、ヘルスケア関連プログラム等を通した支援の可能性を検討します。
5.実施体制
プロジェクトリーダー:松田 克巳(株式会社フォーラムエイト 執行役員)
プロジェクトマネージャー:笹岡 賢二郎(一般社団法人ソフトウェア協会 専務理事)
戦略策定委員会委員長:福田 知弘(大阪大学大学院 工学研究科 環境エネルギー工学専攻 准教授)
6.お問い合わせ先
イノベーション戦略策定事業全般: 一般財団法人 機械システム振興協会
URL: https://www.mssf.or.jp/
本事業の詳細:一般社団法人 ソフトウェア協会
URL: https://www.saj.or.jp/activity/project/metaverse/