1. 趣旨
(1) これまで多くの企業では、データ重視の経営を実行するため、マスターデータ管理(MDM)の観点から、業務プロセスの可視化、データ基盤の整備を進めてきた。
こうした取り組みを実施した企業では、各拠点や事業部門でばらばらであったデータ形式の共通化、異なるシステム間でのデータ交換、アクセス権の統制やデータのメンテナンスなどにより、社内におけるデータ活用が図られ、経営層がリアルタイムで社内状況をデータで把握することが可能となっている。
こうした取り組みが既に進んでいる企業でも、進化が著しい生成AIをさらに活用すれば、より高度な分析を簡便に行うことができるようになる。
(2) 一方で、生成AIをビジネスの現場で活用したいと考えている企業の中には、業務プロセスの可視化、データ基盤の整備の段階でつまづいている企業も少なくない。
そうした企業では、
(i) 社内の経験やノウハウが暗黙知や紙といった形態にとどまり、デジタル化できていない
(ii) データ交換を前提とした標準形式はもとより、データ・知識を抽出・構造化して整理できていない
状況にあるのではないかと考えられる。
2. 第1回 開催概要
2024年7月22日 10:00-12:00に第1回 生成AI活用に向けた企業内データの整備検討フォーラム(委員長:武田 英明 国立情報学研究所 教授)を開催した。
第1回フォーラムでは、企業内データの整備に係る現状と課題、本フォーラムにおける論点と検討テーマについて議論した。
3. 本フォーラムにおける検討テーマ
【論点1】
業務プロセスの可視化、データ基盤の整備が進んでいる企業については、今後、生成AIを積極的に導入する上で、現在のデータ基盤がどのような問題点を持っているのかを明確にする。
(検討事項1) 企業におけるデータ基盤の構築・整備を進める上で、データ基盤とのインタラクションに急速に進化を続ける生成AIが入ってくることを想定して、新たな視点での対応課題はないか。
(例)設計仕様書は、フォーマットが一定程度決まっており生成AIの学習が行いやすいため、社内で保有する設計情報の活用により改良設計や修正案作成時の生産性を向上できる可能性がある。
(検討事項2) 今後さらに進化が期待される生成AIの活用を前提にした場合に、より適したデータ基盤の形があるのではないか。
【論点2】
業務プロセスの可視化、データ基盤の整備ができていない企業については、生成AIを使ってデータ基盤を簡単に作る手段を考える。
(検討事項3) データや知識の抽出、構造化、標準フォーマット化などの業務を、生成AI(LLM等)の支援・活用によって加速する手法が注目されており、そのような研究成果が企業におけるデータインフラの整備に活用できるのではないか。
(例1)生成AIを用いて自社データの知識抽出と構造化
(例2)外部のオープンデータのフォーマットを自社のデータ基盤整備に活用
4. フォーラム委員
委員 | 所属 | 役職 |
【委員長】武田 英明 | 国立情報学研究所 情報学プリンシプル研究系 | 教授 |
石川 冬樹 | 国立情報学研究所 先端ソフトウェア工学・国際研究センター | センター長 |
石切 聡 | アズビル株式会社 業務システム部 | 副部長 |
岡田 忠 | 独立行政法人 情報処理推進機構 デジタル基盤センター デジタルエンジニアリング部 | エキスパート |
佐藤 雅彦 | 株式会社 リコー デジタル戦略部 データマネジメントセンター データドリブン経営推進室 | エキスパート |
田中 紀子 | 株式会社 荏原製作所 データストラテジーチーム データエンジニアリンググループ/戦略企画グループ | グループリーダー |
廣岡 司 | 旭化成株式会社 デジタル共創本部 スマートファクトリー推進センター IoT推進部 IoT推進グループ | 課長 |
福田 賢一郎 | 産業技術総合研究所 人工知能研究センター データ知識融合研究チーム | 研究チーム長 |
前川 徹 | 東京通信大学 情報マネジメント学部 | 教授 |
松下 雄史 | 旭化成 株式会社 生産技術本部 生産技術センター 産機システム技術部 | エキスパート |
宮本 淳一 | 株式会社PFU 業務革新センター 業務デジタライズ推進室 | 室長 |
村上 存 | 東京大学 大学院工学系研究科 機械工学専攻 | 教授 |
相澤 徹 | 一般財団法人 機械システム振興協会 | 専務理事 |
[オブザーバ] | 独立行政法人 情報処理推進機構 デジタル基盤センター デジタルエンジニアリング部 AIシステムグループ |
【第1回 開催状況】