令和4年度イノベーション戦略策定事業 成果概要

ロボットのミッション型性能評価プロセスの仕組み化に関する戦略策定

委託先団体:一般財団法人 製造科学技術センター

事業の目的

1.本テーマの背景、必要性

 ロボットの研究開発が進む一方、与えられたミッションが達成可能かどうかを評価する総合的な性能評価手法が確立しているとは言い難い。このため、ミッション型の性能評価プロセスを体系的に整理すること、評価手順を定める手順書の作成手法や評価手順書を継続的に維持し再利用する方策などを含めロボット性能評価を拡大していく仕組みを構築することが課題である。

2.社会導入・事業化を狙う対象領域

 パイロットケースとして、土砂災害対応を想定したミッション型性能評価手順書を作成し、福島ロボットテストフィールド(福島RTF)で実証試験を行い、その結果等を踏まえて「ロボットのミッション型性能評価プロセスの仕組み化」の提案を行う。

3.イノベーションの目指す姿

 本事業では、陸上移動ロボットによる土砂災害対応を取り上げたが、将来的には様々なロボットや分野でのミッション型性能評価試験に適用可能とする。


図1 ミッション型性能評価プロセスの仕組み化(プロセスの全体フロー)

事業概要

1.市場・ユーザのニーズ・評価をとらえるための実施事項

 関係者からヒアリングを行うとともに、製造科学技術センター内に学識経験者、産業界、関係機関から成る戦略策定委員会を設けて検討を進めた。

2.技術的な課題、機械システム構成・開発上の課題への対応、目標達成のための実施事項

 土砂災害対応を想定したミッション型性能評価手順書を作成し、福島RTFでパイロットケースとして実証試験を行い、その結果をフィードバックするなどしつつ、戦略策定委員会において「仕組み化」及び手順書作成手法について検討を行った。

3.社会導入・事業化に向けた実施事項

 ミッション型性能評価プロセス及び手順書の有用性を高め普及を促進するために、(1)普及啓蒙活動、(2)標準化、(3) 継続性確保、(4)オープン化を基本として活動を進める戦略を策定した。

主要成果

1.市場・ユーザのニーズ・評価

(1)災害対応関係者からは、泥濘エリアなど人が立ち入りにくい災害現場でロボットが利用できれば災害対応のために有意義なこと、(2)産業界からは、有効な試験手法が整備されることは、製品の開発評価に資することであるなど、事業の意義について肯定的な評価を得ることができた。

2.技術的な課題、機械システム構成・開発上の課題及び達成目標に対して得られた成果

実証試験、委員会活動等を通じ、次のような多くの成果を得ることができた。
(1)ミッション・シナリオ・タスク設定によるミッション型性能評価プロセス(MSTモデル)が、ロボットの選定や開発などで有効であることを確認し、ミッション型性能評価プロセスの提案や手順書に反映することができた。
(2)不確定要素の多い屋外試験環境下での実証試験の進め方、一定の再現性を得るために試験条件を数値パラメータ化することの重要性などの知見を得て手順書に反映することができた。
(3)産学官の連携強化、ミッション型性能評価プロセス運営基盤構築、福島RTFとの協業及びインフラ点検分野への範囲の拡大等、今後取り組むべき課題を明らかにすることができた。

3.社会導入・事業化に向けた課題へのアプローチ、普及戦略

 日本ロボット学会に「ロボット性能評価工学研究専門委員会」(委員長:佐藤徳孝名古屋工業大学助教)を2022年12月に設置し、対産業界を含めての普及広報活動を進めている。
 動画による手順書の解説を作成するなど、ミッション型性能評価プロセスの普及に向け一定の「種蒔き」を行うことができた。


図2 ミッション型性能評価プロセスの仕組み化に関する戦略

今後の展開

 提案したミッション型性能評価プロセスや手順書作成手法の有用性を高め、普及を促進するために、以下の活動を展開する。外部資金の獲得を含めたリソースの確保も課題である。
・アカデミアや行政など関係者への普及活動から始め、徐々に産業界も巻き込んで行くことにより、活動の厚みと幅を広げる。
・インターネットを利用した情報発信を進める。 
・活動を通じて、事例やデータを蓄積しつつ手法の有用性を高めるための検討を継続する。
・将来的には、デファクトスタンダードとなりえるような方法論を確立し、新分野のロボットの開発や導入に役立てる。
・新たな学問領域として「ロボット性能評価工学」への展開を構想する。

問い合わせ先

イノベーション戦略策定事業全般:(一財)機械システム振興協会
本事業の詳細:(一財)製造科学技術センター
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