1.イノベーション戦略策定事業の対象テーマ名(実施年度)
高信頼性のためのセラミックス産業のコネクティッド化に関する戦略策定(令和元年度)
委託先:(一社)日本ファインセラミックス協会
2.事業実施後の成果普及
日本ファインセラミックス協会(JFCA)においては、本事業の成果に基づいてNEDOに提案を行い、令和3年度のNEDO先導研究に採択され、「次世代ファインセラミックスのプロセスインフォマティクス基盤構築(令和3年8月~令和4年7月、受託額は約90百万円)」を実施しました。
その成果がNEDOプロジェクト「次世代ファインセラミックス製造プロセスの基盤構築・応用開発(令和4年度~令和8年度、受託金額5500百万円)」につながりました。
その一環で実施されている「次世代のファインセラミックス産業の技術動向及び市場動向に関する調査」(2022年8月~2023年3月)をJFCAほかがNEDOから受託しました。
3.イノベーション戦略策定事業の実施概要
目的
セラミックス産業の市場がエレクトロニクスから自動車などに拡大し、セラミックス部品に要求される耐用年数が大幅に延びたため、信頼性向上が大きな課題になっています。しかし、現状では、川上・川下の企業間での、セラミックス原料の詳細、セラミックス部品の使用環境などの情報共有化、コネクティッド化の遅れが信頼性向上の制約になっていることが指摘されています。このため、セラミックス産業のコネクティッド化による信頼性向上に向けた戦略を策定しました。
このため、①セラミックス部品の高信頼性のデータの体系化を検討し、②高信頼性のためのセラミックス産業のコネクティッド化を進める戦略を策定しました。
事業概要
日本ファインセラミックス協会に、戦略策定委員会を設置し、学識経験者、関係企業、検査機器メーカ、国立研究所などが参加して、セラミックス部品の故障例、信頼性向上の研究状況、高信頼性のためのデータ体系や今後の研究開発のあり方などを検討しました。また、データのコネクティッド化によるセラミックス部品の信頼性向上に関する問題意識について企業ヒアリングを行いました。その主要な成果は次の通りです。
①川上・川下企業とのトラブル例
川上・川下企業との取引において、次のようなトラブルが生じていることが明らかになりました。今後、受け入れ・出荷時の検査など技術的な取引条件のあり方についての検討が望まれます。
・粉体メーカとの間で、セラミックス原料についての明確な仕様がなく、代表値で取引されており、セラミックスメーカが同じ原料と思って使用していても原料の特性が変わって焼成後のセラミックス部品が所期の性能を出せなくなることがあります。
・自動車のTier1との取引では、非常に厳しい品質保証が求められ、契約条件を十分に交渉しなければ、当初のスペックにない原因による納入後の不具合もサプライヤー側の責任になり、多額の賠償が求められることがあります。
②セラミックス部品の故障例
代表的な例として、積層セラミックスコンデンサなどのセラミックス電子部品ではマルチマテリアルが多く、金属とセラミックスの界面において、熱疲労などにより亀裂が発生・成長することがあり、その防止が課題になっています。
③セラミックス企業の問題意識
川上・川下企業間で技術情報の共有化が不十分で、不具合の原因などが不明なため、セラミックス業界では、企業間のコネクティッド化を進めることとそのための研究開発を行うことに対して強いニーズがあることが、企業ヒアリングにより明らかになりました。
④今後の研究開発のあり方
企業間の技術データを統合して信頼性を高めるために信頼性データの体系化などの研究開発が必要になっています。その研究手法としては、産学が連携して、現在進んでいるマテリアルインフォマティクスの手法と先進的な計測技術とを組み合わせて、国家プロジェクトを進めるべきとの方向性が示されました。
4.お問い合わせ先
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