1.イノベーション戦略策定事業の対象テーマ名(実施年度)
シニア就労事業者支援プラットフォームに関する戦略策定(令和元年度)
シニア就労事業者支援に関する戦略策定(令和2年度)
委託先:(一財)ニューメディア開発協会
2.事業実施後の成果普及
ニューメディア開発協会においては、シルバー人材センターの全国団体である全国シルバー人材センター事業協会に対して本事業の成果を紹介しました。
また、全国のシルバー人材センターからの依頼を受けて本委託事業のプロジェクトリーダー(NRI社会情報システム(株)所属)が行った講演において、本プロジェクトの成果が活用されました。
本プロジェクトの報告書を見た横浜市シルバー人材センターが横浜市内の中小企業に対しITスキルを有するシルバー人材の派遣事業を準備中です。
報告書の中で取り上げた仕事の受注及び新規入会をオンラインで促進する仕組みについては、厚生労働省の令和4年度補正予算「シルバー人材センター等デジタル化整備促進事業」をもとに令和5年度に実施されています。
3.イノベーション戦略策定事業の実施概要
目的
[令和元年度]
我が国において高齢化と労働者不足とが進展する一方、働く意欲があり、経験や知識が豊富で、健康で体力もあるシニア人材が数多く存在し、その就労を支援することが重要となっています。シニア人材就労のマッチングは、全国各地のシルバー人材センター、人材派遣会社などが実施していますが、就労マッチングに情報システムを導入することにより効率化し、就労を促進することが期待されています。
シニア人材の就労においては、個々のシニアが希望する「時間×スキル×場所(空間)」をモザイクの小片のように組み合わせ、雇用する側のニーズに合うように再構成する「モザイク型就労」が必要になります。このためのマッチング用の情報システム「GBER」を東京大学が開発中ですので、本事業では、GBERを用いたシニア就労支援の戦略を策定しました。
[令和2年度]
少子高齢化の急速な進展により生産年齢人口は減少していますが、健康寿命が延び、豊富な経験を持つ元気な高齢者が増加しています。こうしたシニア人材の就労を促進することは、我が国経済の活性化に役立つのみならず、シニア人材の生きがいにも役立ちます。
令和元年度においては、シニア就労のマッチング機関に情報システムを導入して、業務を効率化する戦略を検討しましたが、その過程で、就労促進のためには、情報システムの導入だけではなく、次のような課題があることが明らかになりました。
① マッチング業務における情報システムとメディア活用法
② シニア人材の情報リテラシーギャップの解消
③ マッチング機関におけるマネジメント
④ 仕事を依頼する求人側の仕事の切り出し方
特に、ホワイトカラー出身者向けの仕事のマッチングのためには、上記③や④の検討が重要です。そのため、令和2年度は、これらの課題を検討し、シニア人材の就労促進のための戦略を策定しました。
事業概要
[令和元年度]
ニューメディア開発協会に、戦略策定委員会及びWGを設置し、学識経験者、シニア就労支援事業者などが参加して、シニア就労のための情報システムのあり方を検討しました。また、熊本地域及び埼玉地域でGBERを用いた実証実験を実施し、シニア人材には情報システムの操作に不慣れな人も多いため、実証実験の中でシニアIT人材(シニア情報生活アドバイザー)がGBERの使い方に関するマニュアルを作成し、シニア人材への操作研修を行いました。その主要な成果は次の通りです。
①熊本及び埼玉での実証実験結果
GBERの操作研修では、参加者(シニア人材)が初期登録から仕事の申し込みまでを行うことを目標にしていましたが、熊本では45%、埼玉では86%の参加者が目標までの操作ができました。両地域で差が大きかったのは、埼玉ではパソコンクラブメンバーなどのシニアが参加し、熊本では一般のシニアが参加したためで、シニアでは情報リテラシーに大きな差があることが明らかになりました。また、両地域で、GBERへの評価としては今後利用したいとの意見が多く、シニアIT人材による操作研修に対しても有意義との高い評価が得られました。
②GBERの普及促進に向けた課題
上記の実証実験により、シニアにも扱いやすい情報システムのあり方に関する多くの知見や管理者(シルバー人材センターなど)の要望が得られ、この結果を東京大学にフィードバックしました。今後、機能面及び運用面でGBERが改善されることが期待されます。また、シニアの情報リテラシーに対するサポートの必要性やGBERを実用システムとして用いる時の個人情報保護などのセキュリティ対策の必要性などGBERの普及促進に向けた課題も明らかにしました。
③シニア就労促進に向けた課題
シニア就労の促進のためには、情報システムのあり方のみならず、多くの検討課題があることが明らかになりました。具体的には、マッチング業務における多様なメディアの活用法、シニア人材の情報リテラシーギャップ、マッチング機関のマネジメント、求人側の仕事の切り出し方を検討する必要があります。その際、特に、ホワイトカラーOBがその経験を活かした仕事のマッチング、チームによる就業、都市と地方のマッチングなど多くの検討が必要です。
[令和2年度]
ニューメディア開発協会に戦略策定委員会を設置し、学識経験者、シニア人材のマッチング事業者などが参加して、シニア人材の就労促進の戦略を策定しました。その主要な成果は次の通りです。
①マッチング機関におけるシニア就労の課題と方向性
6ヶ所のシルバー人材センターへのヒアリング、シニア情報生活アドバイザー制度への参加団体におけるケーススタディなどの調査を行い、次のような点を検討しました。
・現在、ホワイトカラー出身者の就労ニーズへの対応が不十分で、今後、中程度のスキル・専門性を持った人材のマッチングの強化が重要
・現在のチーム就労では、リーダーの管理業務の負担が大きく、支援が必要
・大都市圏と地方圏のマッチング機関の間の交流は少ないが、農業体験、特産品の販路開拓などの事例あり
・マッチング業務における情報システムの活用はまだ不十分
・ITに不慣れなシニア人材の公平な就労機会は大切で、ITリテラシーの改善が必要
②拡充すべきシニア就労分野
今後拡充すべき分野としては、右表のような5つの分野が期待されます。
③アクションプラン
シニア就労を促進するため、次のアクションプランを検討しました。
・チーム就労のためのリーダー支援
・マッチング機関における情報システムとメディアの活用
・就労開拓(営業・マーケティング)力の強化(企業での営業経験者の活用など)
・マッチング機関における入会促進
・行政との連携による就労開拓
・民間企業など発注者側におけるシニア向け仕事の切り出し方・切り分け
・都市と地方の連携
・マッチング機関のマネジメント能力の向上(経営層への研修など)
4.お問い合わせ先
[1] 本事業の報告書の提供をご希望の方は、以下の資料送付申し込みページからお申し込みください。
https://www.mssf.or.jp/contact/#request
[2] 本件に関するお問い合わせは、以下のお問い合わせフォームからお願い申し上げます。
https://www.mssf.or.jp/contact/#inquiry